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◎津久井やまゆり園での事件について

7月26日未明、相模原市の障がい者支援施設「津久井やまゆり園」において、犯罪史上まれにみる未曽有の殺傷事件が発生しました。
尊い命を奪われた19人、お一人お一人のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされ、今なお苦しんでいる方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

神奈川県育成会は、この凄惨な事件を受けて、8月8日、県知事・県教育委員会・神奈川県弁護士会、記者クラブに対し、声明文を提出しました。
また、8月5日の朝日新聞には、全国手をつなぐ育成会会長久保厚子さんと東京大学教授で視覚障害のある福島智さんの談話が掲載されました。

下記は、神奈川県手をつなぐ育成会依田さんの提言と、全国手をつなぐ育成会連合会久保厚子さんの声明文になります。




提言 ― 津久井やまゆり園の事件を受けて —

 7月26日未明、神奈川県内の入所施設津久井やまゆり園で日本の犯罪史上まれにみる最悪の凄惨な殺傷事件が起きました。事件の概要が明らかになるにつれて、被害の甚大さと異常さに、言葉にならない驚きと無念の想いに襲われます。尊い命を奪われたお一人お一人のご冥福を心よりお祈りし、遺族の皆さまにお悔やみの心を寄せるとともに、負傷された方々の一刻も早いご快癒を願うばかりです。

 当会は去る7月2日3日両日、全国手をつなぐ育成会連合会恒例の全国大会を、今年は神奈川県の地において全国各地から2,100名の参加者を得て開催しました。メインテーマを「誕生した大切な命だから 一人ひとり充実した一生を!」とし、知的障害のある人がどのような年齢や暮らしの場においても、人として当たり前に生きてゆける社会の実現を願いながら、盛会のうちに大会を終えたばかりです。
 そこに結集された大勢の人々の想い、研修で得られた多くの収穫、そして何より、知的障害当事者たちによる熱気溢れる話し合いや素晴らしいライブステージ、それらが一瞬で吹き飛ばされたような喪失感でいっぱいです。障害者の存在を否定し排除する容疑者の異常な言動が繰り返し報道され、障害当事者が著しく傷つき不安に陥っていることにも心が痛むばかりです。

 このような状況下、当会としては、8月5日に行われた市町村支部代表者による定例会での話し合いを経て、とり急ぎ以下の点を提言させて頂きます。
1、入所施設における職員体制の見直しについて
 近年入所施設も地域に開かれ、障害者への理解も進みつつありますが、今回の事件によって安全重視の観点から再び閉鎖的になれば、これまで進めてきた共生社会への道が後退してしまいます。
 ハード面の安全強化だけでなく、職員が意欲を持てる職場環境や処遇の整備も、利用者の暮らしのQOLに直結してきます。特に夜間での利用者20名に夜勤1人という体制は、災害時対応などを考えても極めて不適切な数字です。早急に基準の見直しを含めた対応を求めます。

2、共生社会に必要な教育環境のあり方について
 被害者の無念さを忘れないためにも、今回のことを単に特異な人物による特異な事件として片づけたくはありません。ネット上など表に出ないところでは容疑者に同調する声も拡散しているようで、この機会にこそ、差別や偏見を増幅させない環境作りを社会全体で考える必要があります。
 それには、幼い時から障害のある無しに関わらず地域で共に育ち、多様性を自然に受け入れる心を日常的に養うことで、共生社会の土壌作りをすることが不可欠です。この際特別支援教育や障害理解教育という従来の枠にとどまらず、教育、福祉、医療、司法等、多方面での連携によって社会全体で人間の育ちを捉え、支える体制も必要で、このような趣旨にそった検討会の設置を求めます。

 私たちは、障害のある人たち一人ひとりが尊厳を持って生きていることに想いを馳せ、誰もが明るく気持ちよく生きてゆける社会を目指し、多くの方々に共に考え歩んで頂くことを願っています。今回伝えきれなかった課題については、これからも引き続き提言してゆく所存でおります。

  平成28年8月5日 神奈川県手をつなぐ育成会 会長 依田雍子





神奈川県立津久井やまゆり園での事件について(声明文)

 平成28年7月26日未明、障害者支援施設「神奈川県立津久井やまゆり園」(相模原市緑区、指定管理者・社会福祉法人かながわ共同会)において、施設入所支援を利用する知的障害のある方々が襲われ、19人が命を奪われ、20人が負傷するという未曽有の事件が発生しました。被害に遭われ亡くなられた方々に、衷心よりご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にはお悔やみ申し上げます。また、怪我をされ治療に当たられている方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

 抵抗できない障害のある人に次々と襲いかかり死傷させる残忍な行為に私たちは驚愕し、被害にあわれた方々やそのご家族の無念を思い、悲しみと悔しさにただただ心を震わせるばかりです。職員体制の薄い時間帯を突き、抵抗できない知的障害のある人を狙った計画的かつ凶悪残忍な犯行であり、到底許すことはできません。
 事件は、当会会員・関係者のみならず、多くの障害のある方やご家族、福祉関係者を不安に陥れ、深く大きな傷を負わせました。このような事件が二度と起きないよう、事件の背景を徹底的に究明することが必要です。

 今後、事件対応に関わる皆様には、まずは被害者及び被害者の遺族・家族、同施設に入所されている方々のケアを十分に行ってくださるようお願いいたします。その上で、事件の背景・原因・内容を徹底して調査し、早期に対応することと中長期に対応することを分けて迅速に行いつつ、深く議論をして今後の教訓にしてください。加えて、本事件を風化させないように今後の対応や議論の経過を情報として開示してください。
 また、事件で傷ついた被害者やご遺族が少しでも穏やかに過ごせるよう、特に報道関係機関には特段の配慮をお願いします。

 事件の容疑者は、障害のある人の命や尊厳を否定するような供述をしていると伝えられています。しかし、私たちの子どもは、どのような障害があっても一人ひとりの命を大切に、懸命に生きています。そして私たち家族は、その一つひとつの歩みを支え、見守っています。事件で無残にも奪われた一つひとつの命は、そうしたかけがえない存在でした。犯行に及んだ者は、自らの行為に正面から向きあい、犯した罪の重大さを認識しなければなりません。
 また、国民の皆様には、今回の事件を機に、障害のある人一人ひとりの命の重さに想いを馳せてほしいのです。そして、障害の有る無しで特別視されることなく、お互いに人格と個性を尊重しながら共生する社会づくりに向けて共に歩んでいただきますよう心よりお願い申し上げます。

 平成28年7月26日
           全国手をつなぐ育成会連合会    会長 久保 厚子